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「行くぞ。」
渉さんにもう一度言われて、私は足元の渉さんのバッグを持ち上げた。
渉さんが部屋を出る直前、安永課長が大きな声で「ありがとうございました!」と頭を深く下げていた。
渉さんは勢いよくドアを開けながら言った。
「何をやってる? これから忙しくなるぞ。わかったらとっとと仕事しろ。俺も忙しいんだ。」
渉さんは本当にさっさと歩きだしてしまった。
私は会議室のメンバーに会釈をしてから渉さんの後を追った。
その時に見たメンバーの顔を…渉さんにも見せたかった。
安堵に満ちて、渉さんという社長を羨望(センボウ)の眼差しで見つめていた…彼らの顔を。
エレベーターに滑り込むように乗り込んで、いつも通り私が渉さんの後ろに立つ。
渉さんの広い背中に触れたくなる。
抱きしめたくなる。
目頭が熱い。
…遠野会長……。
渉さんは…こんなにも立派に社長という役を務めてらっしゃいます。
遠野会長も…これなら安心できるかもしれない。
渉さんは…
本当に素敵な…社長ですよ……。
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