2787人が本棚に入れています
本棚に追加
渉さんの水色の背中が涙で滲んでしまいそうになった時、
渉さんが声を発しながら私を振り返った。
「今野会長はどこにいる?」
今野会長は3時からのお客様だ。
「…あ、はい。役員用の特別応接です。」
渉さんは答えた私の言葉よりも…私の顔を見入っていた。
「…なんで泣いてる?」
「…え。泣いてなんか…。」
「嘘言うな。」
渉さんが顔を覗き込むので隠しきれなかった。
「…社長の…姿に…感動しちゃいました。」
「ふーん。その続きは後でじっくり聞く。アレまだ途中だしな。」
視界に入る渉さんの口角が上がる。
ドキリとしたのも束の間、エレベーターが到着して扉が開くと、渉さんはドアの隙間を縫うように狭い間を通り抜けた。
そうだ、時間がない。
渉さんは応接室に向かい、入室前に手早く身なりを整えると、再び表情を引き締めて部屋に入った。
私はそれを見送りながら、
また…胸を熱くしていた…。
最初のコメントを投稿しよう!