使者-1

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「恭ちゃん…。こんなやり方まちがってるよ。」 野崎さんは俯(ウツム)きながら小さく言った。 「桐谷さんには、ちゃんと好きな人がいるし…、その人からも想われてる。…こんなやり方の恭ちゃんなんかがかなうはずないよ。」 語尾にいくにつれて、彼女が少しだけ強気になっていくのがわかった。 そのことに、私だけじゃなく、彼も気付いた様子で反応する。 「…偉そうに。だいたいお前には関係ないだろ?」 彼は野崎さんを睨むように見つめた。 その言葉に彼女はスカートのきれいなプリーツをギュッと両手でつかみ、伏せていた顔を上げて彼を睨み返した。 「関係あるもん!私、恭ちゃんがずっと好きだったんだから!今まで、恭ちゃんの言うことなら何でも聞いてたけど、もう限界。こんなことする恭ちゃんが桐谷さんの好きな人にかなうはずないし、桐谷さんにも全然似合わない!釣り合わない!恭ちゃんなんて最低!最悪!恭ちゃんなんて大嫌い!」 言い終わった彼女の息は荒く、肩が上下に揺れていた。 手は…スカートを握りしめたままだった。
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