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…二人は知り合い。
…お前のことはあてにしてない。
…監視させてた。
…演技。
二人の会話を聞いて、少しずつ事態を把握しようとする。
彼女が入社したどうしようもない理由。
そのことから始まって、何かが結論づけられた時、
私は胸の奥が縮まるほど悲しくなった。
彼女が入社した理由がどうであれ、
今まで彼女が私に接してくれた態度は…
決して演技ではなかった。
悲しくなったのは彼女の気持ちに気付いたから。
『…好きな人がいるの…。』
…彼のこと…
…好きなんだ。
彼女のカラダが小刻みに震えているのにも気付かずに、彼女が好きなその彼は、
隣のテーブルから椅子を一つ引っ張って、私たちの楽しかった小さな空間に土足で無理やり踏み込んできた。
小さなテーブルの淵に以前と同じように肘をつき、私に薄っすら笑いかける。
「望愛ちゃん、やっと会えたね。」
彼の言いようのない不敵な笑みに、彼女だけでなく、私のカラダまでもが震え始めた。
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