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私はその勢いのまま、自分の言葉とは思えない言葉をさらに続けた。
「あなたのせいで、彼女との楽しい時間が台無し。帰っていただくのは彼女じゃなくてあなたです。」
「あはは。ノアちゃん、どうしたの?そのキャラもういいよ。」
「帰ってもらえないなら、私たちが帰ります。さようなら。」
私はバッグを手にして立ち上がり、彼女の手を取った。
彼女も私の行動に驚いていたけれど、私は彼女の腕を少しだけ強く引いた。
「待てよ。」
今度は少し低めの声で、彼が私の腕を掴む。
私たちのやり取りに、店中の視線が集まりつつあった。
「離して下さい。…とにかく、店を出ましょう。」
頭に血がのぼりつつも、冷静になるように努めていた。
お勘定を済ませて私たちは店を出た。
お金を払う間も、歩く間も、彼からどうやったら離れられるかを必死で考えていた。
彼のしつこさは天下一品だった。
「さ、行こ。」
彼が私の腕にもう一度手を伸ばしかけた瞬間、野崎さんの声がその手を遮った。
「恭ちゃん、やめて!」
彼女は真っ赤な顔して…泣きそうになるのを必死に堪えているようだった。
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