使者-1

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意気揚々と進む私たちだったけれど、金曜の夜の店はどこもかしこも会社帰りのサラリーマンやOLたちで溢れていた。 やっと見つけたのは立ち飲みの小さなお店。 だけど私たちは既にお腹は焼き鳥で満たされているし、本当の意味での飲み直しが出来ればそれでよかった。 「立ち飲みって…私も初めて。あ、私も飲んじゃおっかな。」 なんだか気分がよくなって、私も弱いくせにアルコールを口にしてみたくなってしまう。 私たちは二人とも果肉入りのゆずサワーを頼んで大きく乾杯した。 「カンパーイ!」 「かんぱーい!」 力強くぶつかるグラスの音は、夜の街の騒々しさにも負けない。 「あーーー。なんだかスッキリしちゃった。」 野崎さんはグラスから口を離して言った。 彼女の表情は柔らかく、まるで何かから解放されたかのようだった。 「…なんで…好きだったんだろ…。」 今度の彼女は切なげだった。 「理屈じゃ…ないもんね…。」 恋愛経験の少ない私がそんなことを言って、自分で恥ずかしくなりながらも、本気でそう思っていた。 「…また…、好きな人…、出来るかな。」 彼女は私に答えを求めているようだった。 「…できるよ。絶対。」 私はこう付け加えた。 「野崎さん、これからも仕事、頑張ってみるんでしょ?…もしかしたら…初めての社内恋愛ってのもあるかもよ?」 「…社内恋愛?」 「そう。」 「…あ。桐谷さんも…そうだもんね?」 「…あ、それは…。」 そう言われると妙に恥ずかしい。 「あ、照れるな。照れるな。そうだ!私、そっちも頑張ってみよ!」 彼女は明るい笑顔を取り戻していた。 それからお酒の弱い私は、 最初の一杯のゆずサワーで 彼女と何度も何度も乾杯をした。 今日は最低で… 最高の日になった。
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