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母が行ってしまった後も、私はポカンとして立ち尽くしていた。
激しかったわけじゃないけれど…静かな嵐が大きな影響をもたらしたような…そんな感じだった。
「…おい。」
「おい。」
何度か呼ばれていたのだろうか。
何度目かで渉さんがその言葉と同時に私を背中から抱きしめた。
「え、え、え!?」
それでやっと我に返る。
「わ、渉さん!?」
渉さんの唇が私の耳に触れそうな距離だった。
「…続きは?」
「つ、続き!?」
どもっておまけに声まで裏返った。
「いいとこだったのに、邪魔された。」
…い、いいとこ!?
それは口に出来なかった。
渉さんは背中側なので顔は見られてないけど、顔の熱で真っ赤なことは自覚できる。
さっきのことを思い出すだけで、顔から火が噴き出しそうだった。
…は、話を逸(ソ)らそう。
「…ところで…、渉さん、今日、ここに来るの早くないですか?…というか…何時からここに?…何でこんなに早く?」
熟睡していて渉さんが一体何時にここに着いたのか全く分からなかった。
…本当に渉さんの言うとおり、自分の身が無事で良かった…。
私がそう聞くと、渉さんは私を抱きしめていた手を離した。
「はあ?お前、覚えてねえのかよ?」
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