使者-2

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数回のコール音の後に、それが途切れる。 『…俺だ。』 電話に“俺だ”って出る人は、渉さんだけだ…なんて客観的にツッコミを入れたくなる。 …酔っているから大胆な発想も生まれてしまう。 「…渉さん…どうしたんですか?」 電話を掛けて起きながら、急に眠気に襲われて、まぶたが一瞬にして重くなる。 『…どうしたじゃねえよ。こっちのセリフだ。…お前、飲んでるだろ?こんな時間までどこのどいつと飲んでた?俺がいないとこでは飲むなって言っただろ?お前、バカか?』 「…どこの…ドイツ人…?が…バカ…?」 …ダメ。 渉さんの言ってることが理解できなくなってきた。 頭がさらにボーっとして、熱い息が漏れてくる。 横になったせいで、疲れと酔いが一気に体を支配していくみたい。 『テメエ、ふざけんな。…聞こえてんのか?バカが。……。』 …聞こえてます。 …聞こえてるけど…理解できない。 「…渉さん…。」 この後、私は何を話したか覚えていない。 ただ… 渉さんは怒っていたような気がするけれど その怒鳴り声さえも 心地よくて… 私はそのままソファで眠ってしまっていた。
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