使者-2

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携帯の音に涙が一瞬引いた。 私は家にいる時には携帯をバイブから音に切り替える。 仕事上での連絡が入る場合があるので、バイブにしておくと気付かないことがあるからだ。 そして、仕事上の電話… 今、私は渉さんと室長だけ、他の人とは着信音を変えているのだ。 渉さんは一緒にいるのだから、この着信音でかかってくる相手はただ一人。 その着信は…まさに… …室長だった。 「…渉さん、室長からの電話です。ちょっとすみません。」 私がカラダを起こそうとすると、それまでよりも強くカラダを押さえつけられた。 「わ、渉さん…出ないと…。」 「ほっておけ。」 その間にも長く鳴り続けていた着信音が途切れてしまった。 すると、間をおかずに再び同じ着信音が部屋に響く。 こういうかけ方は、仕事上で、そして緊急性がある場合だ。 「渉さん、これ、きっと緊急です。出ます。」 私は渉さんのカラダを押し退けた。 「…何なんだよ。」 納得のいっていない渉さんをよそに、私は着信音のもとに駆け付けた。
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