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携帯の音に涙が一瞬引いた。
私は家にいる時には携帯をバイブから音に切り替える。
仕事上での連絡が入る場合があるので、バイブにしておくと気付かないことがあるからだ。
そして、仕事上の電話…
今、私は渉さんと室長だけ、他の人とは着信音を変えているのだ。
渉さんは一緒にいるのだから、この着信音でかかってくる相手はただ一人。
その着信は…まさに…
…室長だった。
「…渉さん、室長からの電話です。ちょっとすみません。」
私がカラダを起こそうとすると、それまでよりも強くカラダを押さえつけられた。
「わ、渉さん…出ないと…。」
「ほっておけ。」
その間にも長く鳴り続けていた着信音が途切れてしまった。
すると、間をおかずに再び同じ着信音が部屋に響く。
こういうかけ方は、仕事上で、そして緊急性がある場合だ。
「渉さん、これ、きっと緊急です。出ます。」
私は渉さんのカラダを押し退けた。
「…何なんだよ。」
納得のいっていない渉さんをよそに、私は着信音のもとに駆け付けた。
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