2526人が本棚に入れています
本棚に追加
「もしもし。」
急いで出たはいいけれど、私は今のこの状況といろいろな感情で呼吸が少し乱れていた。
『…休みのところすまない。…大丈夫か?』
私の息遣いを感じ取ったのか、室長が心配そうに言った。
「…すみません。大丈夫です。どうされたんですか?」
『ああ、すまない。今日の午後一で会長がF社の社長と会うことになっている。そのF社の小山社長が急にある資料を見たいとおっしゃってるんだ。F社とは上手くいけば今後にも繋がることにもなるから、出来ればちゃんと資料をお渡ししたいんだが…。少し、桐谷君の力を借りたいんだよ。前に会長の担当をしていた時の資料を転用すればすぐに出来そうだ。…悪いがこれから出てこられるかな?」
…そういうことなら行かなきゃならない。
「は…。」
…い。
返事をしようとしたその瞬間、私の手から携帯がもぎ取られる。
…渉さんだった。
「おいおい。休みの日にまでなんなんだよ?」
「…ああ、今アイツの部屋。」
「…ああ、あの人か。」
「…そんなの菊森で何とかなんねえのかよ?」
渉さんの言葉で二人の会話はなんとなくわかるけど、
これは仕事。
今度は私が渉さんから携帯を奪い返した。
「大丈夫です。すぐに行きますから。」
私はそう言って電話を切った。
最初のコメントを投稿しよう!