使者-2

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「はあ?行くって本気かよ?」 「当然です。」 「はあ?俺が来てんのに?」 俺はアイツが『行く』と言ったことがまた気に入らなかった。 なのにアイツはなんの迷いもなくこう言った。 「…渉さん。今の私たちは…その、“プライベート”ですよね?」 「…だから?」 「室長からの電話は“仕事”です。私は社長の秘書ですが、その前に室長の部下なんです。上司から仕事の呼び出しがあれば行くのは当然ですよ。」 …まるで説教だ。 そんなことはわかってる。 …百も承知だ。 だけど… 菊森のところに行かせたくない幼い自分。 さっきの続きが欲しくてダダをこねるガキな俺。 そんな子供の俺がまだアイツを引き止めたくて悪あがき。 「…親父も夕飯までには戻ってくる。今日の飯は親父も、一緒に作るサワさんも楽しみにしてる。」 一番楽しみにしてるのは… …この俺だろうけど それはもちろん言えなかった。 俺の言葉を聞いて、アイツは眉を下げて優しく笑った。 まるで本当の子供を相手にするみたいに。 「…大丈夫です。予定通りに食事は作りにお邪魔します。…渉さんは…これからどうしますか?そんなに時間はかからないと思いますけど、もしよかったらここで…待ってますか?…何もないですけど。」 …本当は俺も一緒に会社に行って、菊森と二人にさせるのを避(サ)けたいとこだが、そこまでガキになるのはやめておこう。 俺にもそれなりにプライドってものはある。 …そう思うと、さっきはコイツ欲しさにバカ丸出しだったな俺。 …カッコわりい。
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