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俺はさっきまでの自分の態度を棚に上げて言い放つ。
「…だったら、早く行け。菊森が待ってるんだろ?ここで待ってるから早く帰って来い。俺は寝てる。…夕べはお前のせいでよく眠れなかったからな。」
「…わ、私のせい?」
「いいから、早く行け。それとも着替えを手伝おうか?」
「い、いいです!結構です!」
アイツはドタバタと着替えと簡単な化粧をして出て行った。
「いってきます。」
アイツがそう言って玄関を出て行くのをつまらなそうに見送ってから、俺は赤いソファに寝転がる。
本当に眠たかった。
夕べの電話でアイツがあんなことを言うから…
本当は夜のうちに駆けてきたかったほどだ。
…来たところでいびきかいて寝てる気もしたし。
でも…
『会いたい』
その言葉が耳に残って
とても眠れなかった。
…ああ、眠い。
俺はソファの脇に転がってるクッションを拾い上げた。
それを仰向けになった腹の上で両手で抱き締める。
…しなやかな体つきの黒猫には似ても似つかない感触だが、
何もないよりはマシだった。
それに…
そのクッションを引き寄せるとアイツの匂いがかすかに香った。
…早く俺のものになれよ…。
もう、何度願ったか。
俺はそのまま心地いい眠りに落ちていった。
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