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私は首を横に振りながら壁に掛かる時計に目をやり、その位置で首を止めた。
「室長…、午後一って言ってましたけど、お時間大丈夫ですか?」
私がここに来たのが10時過ぎ。それから作業をして、もう11時半を過ぎていた。
「ああ。そろそろ準備しないとな。ありがとう。送って行くよ。」
「いえ、私は近いですから。それより、時間があるならちゃんとお昼食べてから会長の迎えに行ってくださいね。」
「…どうして?」
「…どうしてって…、食事を抜くと夏バテや熱中症にもなりやすいんですよ?」
「…そうなんだ。桐谷君も俺のこと、少しは心配してくれるんだ?夏バテになって、君が看病でもしてくれるなら、いっそなった方がいいのかな。」
「…室長。冗談言ってる場合じゃないです。早く片付けて出ましょう。」
「わかった。わかった。すぐ準備するよ。」
室長がデスクを片付ける間に、私は二つのカップを片付けることにした。
私は室長の時間を気にしながら、自分も時間を気にしていた。
渉さんが…待っているから。
本当にあのまま私の部屋で待っているだろうか。
『俺をこんなに待たせるなんていい度胸だな。』
帰った時のセリフが容易に予想できてしまう。
早く帰らなくちゃ。
私は洗剤のついたカップを急いで水で洗い流した。
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