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「お疲れさまでした。」
「ありがとう。会長も喜ぶよ。」
室長は最後まで送ると言ってくれたけど、私はそれを断って、会社から室長を送り出した。
室長はいつもどおりの笑顔を残してほとんど音のしないハイブリットカーで会社を後にした。
私の中には一つの安堵と同時に一つの焦(アセ)りが生まれて、急いでアパートに足を向けた。
アパートに着いて、ドアノブに手を掛けると、ノブは何の抵抗もなく回った。
…渉さんは私を待っていてくれたようだ。
ドアを静かに閉めて、玄関で渉さんの靴の隣に靴を脱ぐ。
その間、部屋からはテレビの音はおろか、なんの物音も聞こえなかった。
そのことに、私もなぜか音を立てないように、足を忍ばせて静かに部屋の中に入っていった。
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