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私は渉さんの手をほどいて腕を伸ばし、渉さんの頬に片手でそっと触れた。
「…ごめんなさい。」
もう一度言ったけれど、渉さんは何も反応しなかった。
ただ、私を見つめるその瞳に、いっそう強い意思が込められたようだった。
私はその瞳に暗示をかけられたかのように、もう一方の手を渉さんの頬に添え、両手で渉さんの顔を引き寄せた。
視線が驚くほど近くで結ばれて、私の胸の中がギュッと縮む。
「…渉さん…ごめんなさい。」
目を閉じて唇を合わせる。
ゆっくりと唇を離しながら目を開けると、目の前の渉さんの顔は…
いつも通り、口の端がしっかりと上がっていた。
「…今日は結構頭にきてるからな。…これで許されると思うなよ。」
渉さんの口角がさらに上へと釣り上がった。
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