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「いるよ。いる。ごめん、少し待って。」
そう言って髪を直しながら玄関に向かい、ドアを開ける前にもう一度服装を確認した。
昨日のままのブラウスの裾を直して、渉さんが閉めたであろう鍵に手をかけた。
「…お母さん、急にどうしたの?」
ドアを開けるとすぐにその隙間から母が顔を覗かせた。
「何よ。いるなら早く出なさいよね。…って、望愛…その格好…。」
…え!?
…何か変!?
母の意味深な言葉に一気に顔が熱くなる。
「…な、何?」
「…もしかして…朝帰り?」
…では…ないけれど。
「ち、違うよ。き、昨日は会社の友達と飲んで…帰ってそのまま…。」
私がしどろもどろに本当なのになぜかわざとらしくなる言い訳をしていると、
「こんにちは。お母さん。」
私の背後からバラの花を背負ったような爽やかな渉さんの笑顔がやって来た。
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