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家に着くと、サワさんがいつもどおりに俺たちを迎える。
いや、…本当に楽しみにしてたのか、いつも以上の笑顔だった。
親父は戻っていなかった。
「ただいま。」
「お邪魔します。」
俺が荷物を持ってダイニングに向かう。
俺が両手に提げる買い物袋を見て、サワさんが笑う。
「坊ちゃま、桐谷さんとの買い物、楽しかったでしょ?」
「…た、楽しかねえよ。ただの買い物だ。」
「はいはい。とにかく食材を仕舞いましょう。今、冷たいものも出しますからね。」
サワさんは俺から買い物袋を受け取った。
キッチンではアイツも手伝って、買い物袋を開けて食材を冷蔵庫に入れる。
「サワさん、これ、今日はなんと250円でしたよ!」
「まあ、いつもは280円なのに!ラッキーね!」
…おばはんか。
サワさんの言う、『冷たいもの』はなかなか出てこなくて…
俺は二人をよけて、冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを出して喉に流し込んだ。
アイツ一人がいるだけで、この家がやけに騒がしい。
その騒がしさが…
心地よかった。
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