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サワさんとアイツはやけに気が合うらしく…
…おばはん同士か。
俺のことをそっちのけで庭に花なんかを見に行ったりしてる。
そして、それが終わるとサワさんがこの家を案内すると言って、アイツを連れて再び出て行った。
…社会見学か。
俺は一人になって、リビングでテレビをつけた。
別に俺はふてくされてなんかいねえ。
サワさんとアイツの仲がいいのはいい傾向だ。
…将来のためにも重要だ。
俺はそう思いながらソファにゆったりともたれた。
しばらくして、廊下の方からにぎやかな声が聞こえてくる。
ずいぶんと長い間家を回っていたことになる。
ダイニングに入るなりサワさんが声をあげた。
「ああ、坊ちゃま。一人にしてごめんなさいね。ついつい、私が桐谷さんを独占しちゃいましたよ。…寂しかったでしょ?」
「…寂しかねーよ。見学会は終わったのか?」
俺は視線をアイツに留めた。
「はい!!このお家、すごいですね!とにかく広いです!お部屋がいっぱい。広いけど隅々まですっごく綺麗で、佐和子さんに掃除のコツとか教わっちゃいました。手作りの掃除道具とか。」
…コイツ、会話がどんどんおばはんになっていく…。
「…そんなこと聞いてどうすんだよ?」
「活(イ)かします!!」
「あ、そ。」
それからサワさん特製の冷たいゆず茶をアイツと二人で飲んだ。
アイツはその味にえらく感動して、飲み終わると作り方を教えてもらうと言って、サワさんのいるキッチンに入って行った。
そして、そのまま夕飯の準備が始まったようだった。
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