使者-3

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顔を赤らめて俯(ウツム)いたまま手を動かすアイツ。 そんなアイツをただ見ていた。 「あ、お前、今日はフリフリのじゃねえんだ?」 「あ。」 そこでアイツはやっと顔を上げた。 「…今日は自分のを持って来たんです。佐和子さんのフリフリは…やっぱりちょっと…恥ずかしいです。」 「ふーん。俺はあれでも良かったけど。ま、それもいいけど。」 今日はアイツの私物で、黒のシンプルなエプロンだった。 どんなものだってかまわねえ。 今日は菊森もいねえし、親父もいねえ。 俺だけが独占出来ればそれでいい。 そう思っていると、アイツが俺の言葉に照れたのか、話を逸(ソ)らそうとして口を開く。 「会長たち…そろそろでしょうか…。」 「『会長たち』?」 「室長が会長を送ってみえるんですよね?…室長もご一緒にお食事されますか?」 「はあ?またかよ?」 思わず本音が漏れた。 また菊森かよ…。 とは思うが、流れとしては菊森も一緒にというのが自然かもしれねえ。 それに、どうせ親父が食べて行けと言うに決まってる。 …親父のヤツ…もっと息子のことを大事にしろよ。 俺は心の中でボヤキながら、それなら今の内にコイツをおおいに独占してやろうと思った。
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