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「…その格好。準備してくれてるのかな?」
会長は靴を脱ぎながら言った。
「…はい。会長のお留守中にすみません。」
「そんなことは気にしなくていい。楽しみだよ。…そうだ、菊森君も食べていくか?」
そう言って会長は私から室長へ視線を移した。
私も会長が室長にも声をかけると思っていたので、同じように室長を見つめ、肯定の返事を待った。
「…いえ、今日は遠慮させていただきます。」
室長からの返事は待っていたものではなかった。
「…室長、何かご予定が?」
思わず私が声をかけていた。
「…あ、ああ。今日は少しね。」
室長はそう言って視線をすぐに会長に戻した。
「では、私はこれで失礼します。お疲れ様でございました。」
そして、室長はもう一度私を見つめて、目だけで『じゃあ。』と言って玄関を出て行った。
その視線が少しだけ寂しそうだったことに…
…私は気付いてしまう。
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