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「渉さん、次はそれを洗って下さいね。」
「これか?」
「そしたら、今度はこれを混ぜてて下さいね。」
「こいつか?」
「じゃ、次はこれお願いします。」
「…なあ。俺、切るとかないのかよ?料理って言ったら包丁を扱うのが花形だろ?」
俺が包丁を手にする。
「ちょ。渉、渉さん!切れるんですか?危ないですよ!?」
「バカにするな。トマト切ってやるよ。こうだな。」
俺がトマトに包丁を入れようとすると、
「ま、待って!こう!こうやって切ってください。あ、あ、危ない!」
アイツが声を上げて俺の手を抑えた。
「ちょ、ちょっと、落ち着いて下さい…。」
「…お前が落ち着けよ。」
「こうやって、切って下さい。」
アイツは包丁を持つ俺の手を小さな手で包み、トマトを抑えるもう一方の手もその上から優しく自分の手を添えた。
…料理って、
やっぱ、おもしれえ。
それに、親父を玄関で迎えてから、コイツのテンションがなぜか上がっちまってるし。
おまけにコブツキだと思っていた菊森も予想外に帰っちまっていねえ。
コイツのテンション高めの理由は全くわからねえけど、コイツはいつもわからねえことだらけだから気にすることもねえ。
相変わらず、俺は一人でコイツを独占だ。
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