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「あはは。渉がキッチンに立ってるのなんて初めてだな。包丁まで持って大丈夫なのか?」
そう言いながら、カウンター越しに会長がキッチンを覗きに来た。
帰ってから着替えているので、今はラフなポロシャツ姿だ。
「うるせえな。俺のおかげでもうすぐ出来るところだ。」
「桐谷くんのおかげだろ。お前は邪魔だったんじゃないのか?」
「そんなことないですよ、会長。少し…大胆ですけど、ちゃんとお手伝いになってますよ。」
「…お前、完全な子供の手伝いとして見てんな。」
「本当のことだから仕方ないだろ。な、桐谷くん。」
「まあまあ、楽しそうだこと。私に言わせれば…。坊っちゃまがキッチンに立つのも初めてですが、そうやって、旦那様がキッチンを覗かれるのも初めてですよ。ふふふ。…二人とも、全く同じじゃないですか。」
「…ふふ。」
「なんだよ。」
「あはは。」
「おほほ。」
あたたかい雰囲気に自然に顔がほころぶ。
私がこの場所にいられることを…
幸せだと思った。
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