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夕飯が始まると、私が会長と渉さんの料理を取り分けて、それに佐和子さんが呆れるのは…前回と同じ。
「まあまあ。…こんなことなら、サワはしばらく休みをもらいましょうかね。」
佐和子さんが冗談交じりに言った言葉に、私は何気なく聞き返した。
「…そういえば…佐和子さんて、お休みあるんですか?」
私の言葉に会長と渉さんが顔を見合わせた。
そして、佐和子さんが言う。
「おほほ。私にはお休みなんて必要ないの。私に子供はいないし、後は年老いた母だけ。母のことは兄夫婦がしっかり看てくれてるから…。図々しいかもしれませんが、ここがサワの家ですよ。」
佐和子さんはいつものように明るく言ったけれど…
私はどこか引っかかった。
そして、渉さんが口を開く。
「…散々休みを取れって言ってんのに、サワさん全然休まねえんだよ。ったく、こっちが困るわ。」
「まあまあ、私のことは気にしないでください。それに、旦那様も坊ちゃまのことも心配で離れられません。」
「だから、心配ないって言ってんだろ?食べ物だって今はどこでも出来上がったものが買えるんだし、宅配だってすげえ種類だぜ?」
「食事は手作りが一番です!」
「…すぐそれだ。」
渉さんは呆れたようにため息をついて私を見た。
「…こんなこと言って休み取らねえの。俺も親父もサワさんにとっては赤ん坊らしい。」
渉さんはレモンとガーリックのタレに漬け込んで焼いたお肉にフォークを勢いよく立ててそのままそれを口に運んだ。
「…うめえ。…あ。」
渉さんは口の中のお肉をもぐもぐと味わいながら大きく噛んで、それを大袈裟に飲み込んだ。
「…もうすぐ盆休みだ。サワさんがそんなに心配なら、コイツを代わりにここに置くから、その間にサワさんが休めばいい。」
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