使者-3

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「え?」 「え?」 「え?」 …もちろん、渉さんを除く三人の反応。 三人とも開いた口が塞(フサ)がらなくて、まばたきだけを激しく繰り返す。 そんな私たちを気にも留めずに、渉さんは自分の言葉に満足気に笑う。 「そうだ。それがいい。」 渉さんは一人で大きく頷いた。 「…坊ちゃま。」 「…渉。」 「…渉…さん。」 「渉。それは無茶だろう。勝手なことばかり言って、桐谷君が困ってる。」 「そうですよ、坊ちゃま。いったい何をおっしゃるかと思ったら。とにかくサワのことは気にしなくて結構です。」 「いい案だと思ったのにな。…だいたい、コイツ、ぜってえ暇してるし。」 「渉。桐谷君に失礼だぞ。すまないね、桐谷君。」 渉さんの代わりに会長が謝る。 …確かにいつもどおりの失礼ですけど… …事実なだけに、強く否定できない。 それに… そうすれば… …佐和子さんが休みを取れるのだろうか。 私は渉さんの突拍子もない提案を、少し真剣に考え始めていた。
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