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「…佐和子さん…本当は…お母様のことも…気になさってるんでしょう?」
私は佐和子さんに問いかけた。
「…桐谷さん?」
佐和子さんは少し驚いていた。
「…お兄さんご夫婦に看ていただいてるとはいえ、しばらく会えていないのなら…気になさってるはずです。…お会いしたいはずです。」
「…桐谷さん、そんなこと…。」
「…私だったら…母にしばらく会えてないなんて…耐えられません。佐和子さんはずっと耐えてきたのかもしれませんけど…。」
佐和子さんの顔は微笑んでいたけれど、彼女はそのまま少し俯(ウツム)いた。
会長も渉さんも黙っていた。
「…佐和子さんは私がここで会長と渉さんに食事を作ったら安心できますか?もちろん、掃除や洗濯もします。…そしたら、安心してお母様に会いに行けますか?お休みできますか?」
一気に話す私に佐和子さんは驚いて、返事に困っていた。
「…そんな。そんなこと…無理ですよ。」
「無理じゃねえよ。」
答えたのは渉さん。
「なあ?」
今度は私に同意を求めている。
私は決意を固めていた。
「…はい。私でよかったらやらせていただきます。」
私は少し堅苦しい返事をした後で、佐和子さんに笑顔を向ける。
「佐和子さんも久しぶりの夏休みですよ。」
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