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佐和子さんは半信半疑の面(オモ)もちで確認の意味を込めてか、会長に視線を送った。
会長は佐和子さんに深く微笑んで、そして私にもその笑顔を向けた。
「…桐谷君に迷惑をかけるつもりはないが…、彼女の言う通り、今年こそは夏休みを取ってほしい。私と渉ならなんとでもなるし…いざとなったら桐谷君がいてくれるからね。」
会長はいたずらっぽく私にウィンクして見せた。
「…旦那様。」
「今まで気遣ってやれなくて、すまなかった。」
「…そ、そんなこと…。」
「じゃ、決まりだな。」
少ししぼんだ雰囲気を渉さんの明るい声があたたかく膨らませる。
だから私も明るく付け足した。
「はい。決まりです!佐和子さん、夏休みの計画、ちゃんと立ててくださいね。」
「…ふふ。夏休みの計画なんて…もう、何年ぶりかしらね。」
佐和子さんは子供みたいに笑った。
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