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「おいおい、せっかくいい店構えなのに、そんなんじゃ客が減るぜ?」
私の違和感を渉さんが別の言葉で表現した。
「うるせえな。減ってねえだろ?俺は生涯このスタイルだ。文句あるなら食わせねえ。」
「はあ?」
「なんだよ?」
この店主さん、なんだが血の気が多すぎます。
でも、さっきからずっと話しているのに、手はそれ以上に忙しそうに動いていた。
そして、しばらくして出されたのは、天ぷら付きのざる蕎麦。
「わあ…。」
思わず見入る。揚げたての天ぷらの色鮮やかさと、きっとサクサクであろう天ぷらの食感を瞬時にイメージする。
「あ?天ぷら?」
私とは別の反応の渉さん。
そして、横目に私を見ながら言う。
「いつもはざるだけなんだよ。」
すると店主がニカッと笑う。
「だってよぉ。渉が初めて彼女連れてきたんじゃねえか。サービス。サービス。」
「あ、そ。ざるの分しか金払わねえからな。」
そう言った渉さんはもう、お蕎麦に箸を伸ばしていた。
渉さんのその表情は…
もしかして…
照れてるの?
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