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佐和子さんの夏休みが決まって、私たちの中にはなにかあたたかいものが生まれていた。
会長と渉さんと佐和子さん。
みんなはその輪の中に私の居場所もつくってくれていた。
…大好きな人と一緒にいられる…
その幸せをかみしめていた。
「佐和子さんがいない間、朝ごはんを作るためには何時に来ればいいんでしょう?…早起きしなきゃダメですね。」
「はあ?朝から来て朝飯間に合うわけねえだろ。泊まり込みだ。泊まり込み。」
「…え?」
「『え?』じゃねえよ。」
「渉。それが人にものを頼む態度なのか?すまないね、桐谷くん。君さえ良ければ部屋は用意するからね。…本当に…こんなことをお願いしていいものか…。」
「あ、はい。それは大丈夫です。会長のお体のこともまだ心配ですし。渉さんも佐和子さんもいない時には私がそばにいますから。」
「…ありがとう。」
「うわ。なんだかんだ言って、親父が一番甘えてんじゃねえか。」
「・・・。」
笑いが絶えず、話も尽きず、食事もいつもの何倍にもおいしく感じられた。
「望愛。」
渉さんは二人の前で何度も私をそう呼んだ。
「はい。」
私はそれにドキドキしながら返事をして、その度に会長と佐和子さんが目を細めて笑っていた。
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