使者-3

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車が走り出して、しばらくしてハッとする。 「あっ!!」 「…なんだよ?」 「…買い物って…、私、佐和子さんとメニューの打合せとか何も出来てませんでした…。」 「そんなこと、どうでもいいだろ。俺が連絡してやる。」 渉さんはそう言って、イヤホンを耳に取り付けて電話を掛けたようだった。 「ああ、サワさん?俺。今日の晩飯だけど、アイツが作るからサワさん、ゆっくり休んで。今から買い物して行く。じゃあ。」 …電話はそれだけですぐに終わった。 「え、渉さん!?お料理教室って思ってて…私、メニューとか何も考えてないですよ!?」 「だったら、今から考えろよ。適当でいい。親父もお前の作ったものなら何でも食べそうだしな。」 「…そんな…。どうしよう。」 …急に困ったことになった。 買い物も佐和子さんからのおつかい程度に考えていたのだ。 それに… 「…あの、渉さんの家での食事に…安いスーパーとかで買い物してもいいんですか?」 …もしかして、すべて高級食材とか…? 「そんなのいいに決まってるだろ。サワさんなんて、『どこどこのアレが安売りだった』とかよく言ってるぜ?」 「…そうですか。」 …少し、ホッとした。 でも…メニュー…どうしよう。 すると渉さんが言う。 「お前が作るならカレーだってなんだっていい。そんな顔するな。」 渉さんは前を向いたままだった。 だけど… すごく うれしかった。
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