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車が走り出して、しばらくしてハッとする。
「あっ!!」
「…なんだよ?」
「…買い物って…、私、佐和子さんとメニューの打合せとか何も出来てませんでした…。」
「そんなこと、どうでもいいだろ。俺が連絡してやる。」
渉さんはそう言って、イヤホンを耳に取り付けて電話を掛けたようだった。
「ああ、サワさん?俺。今日の晩飯だけど、アイツが作るからサワさん、ゆっくり休んで。今から買い物して行く。じゃあ。」
…電話はそれだけですぐに終わった。
「え、渉さん!?お料理教室って思ってて…私、メニューとか何も考えてないですよ!?」
「だったら、今から考えろよ。適当でいい。親父もお前の作ったものなら何でも食べそうだしな。」
「…そんな…。どうしよう。」
…急に困ったことになった。
買い物も佐和子さんからのおつかい程度に考えていたのだ。
それに…
「…あの、渉さんの家での食事に…安いスーパーとかで買い物してもいいんですか?」
…もしかして、すべて高級食材とか…?
「そんなのいいに決まってるだろ。サワさんなんて、『どこどこのアレが安売りだった』とかよく言ってるぜ?」
「…そうですか。」
…少し、ホッとした。
でも…メニュー…どうしよう。
すると渉さんが言う。
「お前が作るならカレーだってなんだっていい。そんな顔するな。」
渉さんは前を向いたままだった。
だけど…
すごく
うれしかった。
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