第2話

3/36
前へ
/36ページ
次へ
 拓の希望はかなえられ、拓、AS、そして本人の希望で涼の四人は別室で食事することが許された。もっとも拓たちだけでなく、片山と田村、岩崎、宮村の四人も別室を希望した。彼らも理由は「食事までテレビに映りたくない」ということだったが、拓はその面子から推測して彼らは佐山の死亡について語り合いたいという意図を悟った。田村は役場集合後、元監察医として検死のため呼ばれたので事件を知っている。 「あっちもきっと、あたしたちが色々相談してるって思ってるって」  拓が察したとおりサクラも察し、そう言った。 「でもスズっちは芸能人やからこっちに来てもよかったん?」  そう言いながら飛鳥はお面を取った。キャラクターと違って飛鳥は思ったより普通の同世代の女の子だった。 「どちらかというと、ああいう騒がしいのは…… 正直、カメラはまだあまり慣れなくて。歌う時は気にならないんだけどね」 「そんな事では現世の修羅界と呼ばれる芸能界は生き残れへんで?」  飛鳥はウーロン茶を自分のコップだけに注ぎながら言う。さりげにサクラが「自分だけかいっ!」と突っ込むが「煩いっ! ウチはそういう堅ッ苦しい上下関係はキライや!」と喚く飛鳥。それを見てクスクス笑いながら涼も自分のグラスにウーロン茶を注いだ。そして拓やサクラの分も注ごうとすると、サクラがそれを制して「ここに皆平等」と自分で注いだ。そして拓もそれに習って自分でウーロン茶を注ぐ。 「二人とも、ノリといいキャラといい、私よりよっぽど芸能界向きだね」 「同意見だ。だけど飛鳥はともかくサクラはテレビ、ダメだしな」 「そういえば船でもそんなこと言ってましたけど……どうしてなんですか? サクラちゃん頭もいいし声も綺麗だしきっと芸能界向きですよ?」 「サクラちゃんは自由に生きたいからね~」  そういうとサクラもお面を外した。その瞬間「あっ」と涼は息を呑んだ。素顔のサクラが、涼が想像していたより幼く、さらに思わず絶句してしまうほどの美貌をもっていたからだ。可愛い、ではない。綺麗、なのだ。子供の無邪気さはないが、別の次元の純粋さと気高さがあり、さらに妖気を漂わせているような妖艶さもある。 「サクラちゃん、美人……」  日本の芸能界でもここまで完璧な美貌をもっている女性はいないのではないか、と思えるほど完璧な美人だ。年齢的には子供タレントになるのだろうが子供らしさはない。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加