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アイツの態度が俺の胸の奥をざわつかせる。
公私混同はすまいと思うが、これじゃあ仕事が手につかねえ。
なのに、アイツは俺の乱れ始めた胸の内をさらにかき乱すようなことを言う。
「…な、なんでも…ありません。」
俺の左側からアイツの弱々しい声が届く。
俺は正面の液晶を見たままキーボードを叩き続けながら言う。
「なんでもないわけねえだろ。言え。」
「…なんでも…。」
「言え。」
俺に隠し事をするとはいい度胸だと半分イラついて、デスクトップから視線を外して睨むようにアイツを見た。
アイツは両手をギュッと握って俯(ウツム)いたまま言った。
「…本当に…何かがあったわけじゃ…ないん…です。ただ…。」
「ただ…何だ?」
急かすように先を促(ウナガ)した。
アイツに拒否権がないのはいつものことだ。アイツだってそれをわかってる。
観念したアイツが少しだけ顔を上げて口を開く。
「…ただ…私…自分の気持ちに…気付いたんです。」
その瞬間、胸の奥がぐらついた。めまいがしたのかと錯覚したくらいに。
「…どんな気持ちだ?」
今度はぐらつくどころか心臓が跳ね出していた。
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