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けれど、私が室長のことをそんな風に感じたのは、その時だけだった。
総務部に行くと言って、しばらくして戻って来た室長はいつも通りに穏やかな表情をしていた。
私はそれに半分ホッとしながらも…もう半分はどこか不安だった。
その穏やかな笑みの奥に…余裕めいた微笑みが覗いているように思えたから…。
少し前まではすごく好きだった室長の優しい笑顔にそんな疑念を抱くなんて…
自分がイヤな女になっていくみたいで、気持ちが沈んだ。
それと同時に、
『…渉さんと会長を切り離して考えられない…』
室長のその言葉は少なからず、私にショックを与えた。
自分の気持ちがはっきりとわかったと思ったそのすぐ後で聞いたのだからなおのこと。
でも…。
私は唇をキュッと結んで力を入れた。
私が渉さんを想う気持ち…
会長のためなんかじゃない。
会長の息子だからじゃない。
私が渉さんを想う気持ち…
きっと…
室長にはわからないよ。
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