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室内にはキーボードを叩く軽快なリズム。
アイツがマウスを握ってから、二人で無言で作業を続けていた。
俺の方は仕上がりに近いので、時折手を止めてはアイツを見る。
いつもは無防備は唇がキュッと締まって凛とした表情はまさに社長秘書。
手元の動きも無駄がなくて作業は順調なようだ。
…コイツなぁ…ホント、プライベートとギャップありすぎるわ。
俺は鼻で小さく息を漏らすと同時に口元を緩ませる。
…アイツの口元とは対照的に。
アイツは社長秘書。
…俺の秘書。
誰にだってチャンスがあれば、アイツのプライベートを知ることは出来るだろう。
だが、アイツの仕事上でのこの姿をこんなにそばで見られるのは俺だけだ。
つまり…
アイツのギャップを知り得るのは俺だけだ。
社長になってよかったと思えんの…唯一これだけかもな。
…バカか俺。
…ま、若干一名、アイツの仕事上での顔を間近で見てる奴がいるが…
…菊森にはアイツのプライベートを見せるつもりはない。
問題外だ。
王子は王子らしく、もっと清楚な姫様でももらっときゃいいんだよ。
…なあ、モンスターに捕らわれた姫さまよ。
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