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「野崎くん。」
そんな彼女を見て、室長が呼び止めた。
「野崎くん…でよかったよね?」
室長は手を止めていた。
「…はい。」
野崎さんは真っ赤な顔のままで小さく返事をした。
「出て行くことはない。私のことは気にせず、フロアを見ていきなさい。桐谷くんに案内してもらうといい。」
「室長…でも、資料…。」
それに応答したのは私。
本来は私の仕事だ。
「大丈夫だ。それに社長も自分が言い忘れてたことを君には知られたくないはずだ。知らなかったことにしといてくれ。…今なら役員会議室でコーヒーを飲んでもいいことにしよう。さ、彼女を案内してやってくれ。」
「…すみません。」
「…すみません。」
私たちは二人で謝っていた。
それから二人で給湯室に移って、コーヒー…にしようと思ったけれど、野崎さんも紅茶派だというので、紅茶を入れることにした。
室長のコーヒーは昼食の直前なので入れず、私たちは役員会議室に向かった。
野崎さんは思いがけず室長がいたことで、緊張が増したのか…
どこか無口で…
役員会議室に入ってからも
そのすべすべの頬が…
まだ、少しだけ赤かった。
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