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「ここはね、役員がメインで会議をするところなの。ここで紅茶なんて初めて。野崎さん良かったね。こんなこと、普通は出来ないよ?だって、基本、役員以外は使用できないし。」
「…はい。」
…あれ?
何だか予想と違う反応。
さっきまでの様子だと、もっと感動とかしちゃうのかと思ったのに。
…私、一人でちょっと感動なのに。
「…野崎さん、どうか…した?」
私の話にどこか上の空の彼女に言葉をかけた。
私の言葉に野崎さんは視線が少し踊って、瞬きが多い。
そんな彼女が口にしたのは
「あの、…さっきの方って…。」
「さっきの?室長のこと?」
「『室長』?」
「うん。秘書部の…そうだね、他の部署で言ったら部長に当たる人。菊森室長だよ。」
「…菊森…室長。」
彼女はその名前を呟きながら、まるで自分を落ち着かせるように紅茶をゆっくりと飲んだ。
「…室長が…どうかした?」
察しの悪い私はこんな質問をさらりとしてしまう。
全く恋愛偏差値が低いのだ。
でも、こんな私でも次には気付かざるを得ない。
「え、あ、べ、別に何でもないです。ただ、あの、少し、びっくりして。」
「…ビックリ?」
「だって…すごく素敵な人だったから。」
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