雲行き-1

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「また、ゆっくりね。」 「…はい。」 野崎さんに笑顔を向けると、彼女も笑顔で返してきた。 エレベーターの扉が閉まり、中の箱がゆっくりと動き出す。 私は社長の出掛けの準備のために秘書室に戻った。 秘書室では室長が作業を終えて、お昼に出るところだった。 「彼女は満足したかな?」 室長の言葉に私は少し間を置いて答えた。 「…はい。…とても。」 「よかったな。じゃあ、この資料、社長に頼むよ。」 室長に出来上がったばかりの資料を手渡された。 私は少しだけぼやっとしていた。 「…どうした?ぼーっとして。熱でもあるのか?」 室長がそっと手の甲で私の頬に触れた。 「だ、大丈夫です、何でもないんです。すみません。」 私は室長に早くお昼に行くように促して、準備に掛かった。 でも… その手が止まる。 野崎さんの中に芽生えた気持ち…。 室長の私に対する態度…。 私の頬からは… すっかり熱が冷めていた。
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