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次の瞬間。
隣のアイツがそう言いながら、手を伸ばして俺の髪の毛にそっと触れた。
「ここが…少し…はねて…ます。」
言いながらどんどん声が小さくなって、最後は聞き取れないほどだった。
そして、その声がしぼんでいくのとは逆に、アイツの顔は中心から赤みが広がっていく。
バカかこいつは。
自分から俺に触れといて、
それに恥ずかしがっての
この顔だ。
『食ってくれ。』って言ってるも同然じゃねえか。
「寄り道する気満々なんだけどよ…サワさんがお前と一緒に夕飯の買い物行くって言って待ってるし、親父なんてまるでガキみたいに朝から変にそわそわしてお前を待ってる。」
俺が言うとアイツは顔の赤みを少しだけ振り払って言った。
「…じゃあ、早く行った方がいいですね。」
…ちぇ。
子供染みたボヤキを飲み込んで俺は言う。
「ま、夏休みはこれからだ。思う存分楽しもうぜ。」
俺は夏休みへ突入とばかりに、アクセルを強く踏んで加速した。
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