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少し緊張していたせいもあってか、車中での私はボーッとしたり、焦ってみたり、時々渉さんとの会話にちぐはぐな言葉を返していたらしく、渉さんにバカにされっぱなしだった。
そして、車は遠野邸に着いた。
再び渉さんが荷物を持ってくれて、身軽な私は渉さんの後について玄関をドアを抜けた。
「いらっしゃい、桐谷さん!あ、坊っちゃまもおかえりなさいませ。」
「…サワさん、俺のこと、まるっきり付け足しだな。ま、いいけど。こいつの部屋、出来てる?」
「…はい。整えてあります。」
そこで渉さんは私を見る。
「俺と同じ部屋でいいって言ってるのに、親父がうるさいから一応別の部屋を用意してある。荷物だけ放りこんどきゃいい。」
「・・・。」
私は返事に困って、曖昧(アイマイ)に頷いた。
「坊っちゃまのベッドのシーツは全部新しくしましたよ。」
「お、さすがサワさん。」
二人の会話は妙に楽しそうだった。
「荷物、置きに行くぞ。」
「はい。」
私は広い家の中でまた渉さんの背中を追った。
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