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逃げられないとわかっていながら、私はほんの少し悪あがき。
私の中のずるい部分が顔を出す。
「…渉さんは…どう…なんですか?」
自分の気持ちを伝える前に、渉さんの気持ちが知りたくなる。
それを聞いて渉さんは笑った。
「…お前。俺の気持ちがそんなに知りたいのかよ。」
私は肯定も否定もせずに渉さんの視線を必死に受け止めていた。
渉さんはその視線で私に返事をするように促していた。
私は唾を飲み込んで、呼吸を整えて…
返事をした。
「…はい。知りたいです。」
「なら、教えてやる。だが、お前の方が先だ。お前が言ったら俺も教えてやる。…もちろん、この上で。」
渉さんはそう言ってもう一度端にある二つ並んだ枕に視線を移して、再び私の目を見据えた。
脈拍が大きく振れる。
唇を少しだけ舐めてから…
ゆっくりと口を開いた。
「…私は…。」
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