雲行き-2

22/40
前へ
/40ページ
次へ
「…すぐ行く。約束でもねえから待たせてもいいだろ。サワさんちょっと適当に相手しといて。めんどくせえ奴だけど。」 「かしこまりました。」 佐和子さんはそう返事をして、ドアを閉めた。 渉さんがベッドに戻って、さっきより近い20センチの距離に座る。 「っとに、俺たちにはよく邪魔が入る。」 『…ホントに。』 私は声には出さずに心の中で相槌を打った。 いつもならイラつく渉さんが、今日は少し様子が違う。 くすくす笑って笑顔を浮かべる。 「ま、俺も慣れっこだけどな。俺、お前と一緒にいて、だいぶ辛抱強くなったわ。」 「…それは…よかったです。」 私の返事に少し間を置いて渉さんが言った。 「望愛。最高の夏休みは少しおあずけだ。俺も惜しいが、お前も夜の方が気分が盛り上がるだろ?親父もサワさんも早い時間に寝ちまうし。」 …よ、夜の方が… 気分が盛り上がる…? …何の? って、わかってるくせに。 自分だけののりつっこみをしているうちに渉さんの顔が10センチに近づく。 「…望愛。お前は俺のものだ。ちゃんとわかってるだろうな?」 私は… 私の返事は決まっていた。 もう、はっきりと決まっていた。 「はい。」 私はそう返事をして頷いた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2621人が本棚に入れています
本棚に追加