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「…すぐ行く。約束でもねえから待たせてもいいだろ。サワさんちょっと適当に相手しといて。めんどくせえ奴だけど。」
「かしこまりました。」
佐和子さんはそう返事をして、ドアを閉めた。
渉さんがベッドに戻って、さっきより近い20センチの距離に座る。
「っとに、俺たちにはよく邪魔が入る。」
『…ホントに。』
私は声には出さずに心の中で相槌を打った。
いつもならイラつく渉さんが、今日は少し様子が違う。
くすくす笑って笑顔を浮かべる。
「ま、俺も慣れっこだけどな。俺、お前と一緒にいて、だいぶ辛抱強くなったわ。」
「…それは…よかったです。」
私の返事に少し間を置いて渉さんが言った。
「望愛。最高の夏休みは少しおあずけだ。俺も惜しいが、お前も夜の方が気分が盛り上がるだろ?親父もサワさんも早い時間に寝ちまうし。」
…よ、夜の方が…
気分が盛り上がる…?
…何の?
って、わかってるくせに。
自分だけののりつっこみをしているうちに渉さんの顔が10センチに近づく。
「…望愛。お前は俺のものだ。ちゃんとわかってるだろうな?」
私は…
私の返事は決まっていた。
もう、はっきりと決まっていた。
「はい。」
私はそう返事をして頷いた。
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