2621人が本棚に入れています
本棚に追加
何の前触れもなくやって来た男、大塚隆。
よりにもよって、こんな時に来るとはタイミングが悪すぎる。
大塚とは大学時代からの付き合いだった。
あの頃はお互い親の金でやりたい放題、思う存分遊んでいた。
アイツとつるんでたのは、ただ単にお互いの境遇がよく似てたことと、親父同士が知り合いだったからだ。
容姿と金があれば女はいくらだって寄って来た。
俺は恋愛なんてしたことはないが、体が欲すれば女を釣った。
そんな時、俺は大塚の癖(クセ)を見つけた。
アイツは…
いつだって俺のものを欲しがった。
俺が持っているもの。
俺が興味を示すものを。
どんな趣味をしてんだか、
俺と寝た女さえも欲しがった。
あの頃は俺は一人の女に執着するつもりなんて毛頭なかったし、しつこく言い寄る女をアイツに押し付けられて、それはそれでよかったんだが…
今度ばかりはそうはいかねえ。
望愛は間違いなく俺の女だ。
だが…
それを知ればアイツは望愛に興味を抱く。
そうなっては面倒だ。
大塚の前では社長と秘書を貫(ツラヌ)き通す。
望愛には少し冷たいくらいに接するのがちょうどいい。
…俺と望愛のために。
「行くぞ。」
「はい。」
望愛の顔が秘書としての表情に変わるのを確認して、俺たちは部屋を出た。
最初のコメントを投稿しよう!