雲行き-2

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何の前触れもなくやって来た男、大塚隆。 よりにもよって、こんな時に来るとはタイミングが悪すぎる。 大塚とは大学時代からの付き合いだった。 あの頃はお互い親の金でやりたい放題、思う存分遊んでいた。 アイツとつるんでたのは、ただ単にお互いの境遇がよく似てたことと、親父同士が知り合いだったからだ。 容姿と金があれば女はいくらだって寄って来た。 俺は恋愛なんてしたことはないが、体が欲すれば女を釣った。 そんな時、俺は大塚の癖(クセ)を見つけた。 アイツは… いつだって俺のものを欲しがった。 俺が持っているもの。 俺が興味を示すものを。 どんな趣味をしてんだか、 俺と寝た女さえも欲しがった。 あの頃は俺は一人の女に執着するつもりなんて毛頭なかったし、しつこく言い寄る女をアイツに押し付けられて、それはそれでよかったんだが… 今度ばかりはそうはいかねえ。 望愛は間違いなく俺の女だ。 だが… それを知ればアイツは望愛に興味を抱く。 そうなっては面倒だ。 大塚の前では社長と秘書を貫(ツラヌ)き通す。 望愛には少し冷たいくらいに接するのがちょうどいい。 …俺と望愛のために。 「行くぞ。」 「はい。」 望愛の顔が秘書としての表情に変わるのを確認して、俺たちは部屋を出た。
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