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「お、渉!」
渉さんについて下に降り、ダイニングに入ると一人の男性がソファから立ち上がって渉さんに向かって来た。
彼が正面を向く。
目が…合った。
私が小さく会釈をすると、同時に私と彼を遮(サエギ)るように渉さんが私の前に体を寄せて返事をした。
「どうしたんだよ、急に。連絡くらいして来いよ。今日はいろいろ立て込んでる。」
「え?そうなの?そんなことより…後ろのコは?」
「俺の秘書だ。」
「秘書?」
「そうだ。」
「なんで?休みじゃないの?」
「休みだが…事情があって。来させてる。俺の秘書になった時点でコイツにはプライベートもなにもねえよ。俺が必要なら呼び付ける。そんなもんだろ?秘書なんて。」
一瞬、耳を疑った。
渉さんの秘書という立場を蔑(サゲス)むような言い方に頬も少し引きつっていた。
「ひでえ言い方。でもいいなあ。さすが社長は違うね。仕事だとしてもこんなかわいいコと一緒にいられるんだから。」
「はあ?コイツがかわいい?お前の目、どうかしてんじゃねえの?それに、自分もそうなりたかったらこんなとこに来てねえで、努力して親父さんに認めてもらえよ。」
「…そうなんだけどさ。」
「あ、ちなみに俺のとこにはむさ苦しい男の秘書もいるけどな。」
「ええっ?男はいいよ。このコみたいにかわいいコがいい。」
「その前に自分の会社で上に上がれよ。そんなことより、本題は何なんだよ。」
渉さんと大塚さんはソファに座り直していた。
私は二人からは離れて、キッチンで佐和子さんにアイスティーを用意してもらい、二人のもとに運んだ。
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