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私がアイスティーを出すと、大塚さんは「ありがとう。」と満面の笑みで受け取り、それを一口含んで、渉さんに話し始めた。
「別にこれと言って用事があったわけじゃないんだ。連休になったし、渉も休みかな…と思って。渉が空いてれば久しぶりに飲みに行こうと思ってさ。ほら、夏ってこう、なんか弾(ハジ)けたくなるじゃん?」
「…そうか?」
「そうだよ!ほら、覚えてない?昔は海に行ってナンパして、女の子何人も持ち帰ったじゃん。渉はモテたよなー。」
「…あれはお前が行こうって言って行っただけだろ…。」
私は渉さんにもアイスティーを出して、そこで席を立った。
私の聞きたい内容ではなかったけれど、席を離れても二人の会話は私の耳に届いていた。
「そうだけど、結局女の子はみんな渉目当てだっただろ?」
「はあ?」
「それにさ、ちょっといいクラブでも飲みたくてさ。渉といれば女の子もすぐに集まるし。ねえ、行こうよ。渉だって毎日の社長業でストレス溜まってんだろ?」
「行ったらもっとストレスだ。」
「なんでだよ?昔はよく行ったじゃん。ひと夏の…って言うじゃん。女の子と楽しくやろうよ。別に彼女がいるわけじゃないんだろ?渉、一人に執着しないタイプじゃん。」
「…いねえよ。いなくてもそんな気分じゃねえよ。」
「あ、もしかしてあの秘書ちゃんとデキてるとか?」
彼の軽い口調がキッチンにも聞こえる。
遠慮をして声を潜めたりするということも、全くしないらしい。
「バーカ。ちげーよ。アイツ、全然俺のタイプじゃねえし。」
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