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私の胸の奥がギュっと縮まる。
頬の筋肉は下がったまま動かない。
これは…どういうことなんだろう。
大塚さんの前で社長と秘書の関係でいることは理解したつもりだけど…
こんな風に言われなきゃ…ならないのだろうか。
しかも、大塚さんから聞かされる話は私が知りたくもないような話題ばかり。
喉が渇いて、佐和子さんにそれを伝えたいのに、口が開かなかった。
「…桐谷さん。私たちもお茶を飲んで、夕飯の買い物に行きましょう。」
佐和子さんが柔らかい笑顔を注いでくれた。
私は返事が出来ずにただ静かに頷いた。
「坊ちゃま、ちょっと桐谷さんと出て来てもよろしいですか?」
キッチンから出て、エプロンで手を拭きながら佐和子さんは渉さんに声を掛けた。
「ああ。こっちはいいから。」
渉さんが返事をしたので、私は佐和子さんと二人でダイニングを出た。
「支度が出来たら、裏口に来てね。買い物は荷物が多いから私の車で行きましょう。」
「はい。」
私は一度自分の部屋に行って、手荷物をまとめる。
素敵な部屋の中でも私の心は沈んだままだった。
渉さんには何か…考えがあるはず。
頭ではそうわかっていても、実際に耳に入ってくると…それを忘れそうになるくらいショックだった。
私は大きく深呼吸してから玄関に向かった。
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