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5分もしないうちに車はスーパーに着いた。
「今日は中華ね。メインは酢豚にしようと思ってるの。」
佐和子さんがカートを押そうとするのを私が代わった。
スーパー。
…私でも買い物に来るような極一般的なスーパーだった。
「いつもここで買い物するんですか?」
「そう。どこか安いって噂を聞いたらハシゴしますよ。」
「…すごく…普通なんですね。」
「可笑しいでしょ?旦那さまも坊ちゃまもそんなことしなくていいっておっしゃるんだけど、これが私の楽しみだからね。」
佐和子さんは肩をすくめて笑った。
カートを押し進めながら野菜コーナーで野菜を選ぶ。
佐和子さんが玉ねぎを掴みながら独り言のように言った。
「…今日は…少し多めに買いましょうか。」
「…多めに?」
「そう。大塚さまがすんなり帰ってくれるとは思えないから。」
「…え。」
「今日は本当に久々にお見えになったけど、いつも遠慮なしに遅くまでいらっしゃるから。…遅くまで…というよりも、ほとんど毎回お泊りになってるかしら。今回は桐谷さんがいるから、坊ちゃまも大塚様にはお帰りいただくと思うけど…夕飯くらいはお食べになるのを考えといた方がいいでしょう。」
「…は、はい。」
佐和子さんの言葉を聞いて、少し不安になる。
あの話を…いったいいつまで聞くことになるのだろうか…。
そして…
私と渉さんのプライベートは…
夏休みは…
いつから始まるのだろうか…。
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