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「わ、私。お出迎えに。」
大塚さん…
なんだか…怖い。
私は佐和子さんの声を聞いて、そのままソファから逃げるように立ち上がった。
玄関に着くまでに心の中で何度も繰り返す。
『大塚さん…いつお帰りになるんだろう。』
彼の自由すぎる行動も少し苦手だけれど…
それよりも、渉さんの態度に落ち込んでしまう。
私と少しも目を合わせてくれないし…
あの言われよう…。
せっかくの…
夏休みなのにな…。
私は尖らせた唇をキュッと引っ込めて笑顔を作り直す。
玄関の扉の向こうに、会長の気配を感じたからだ。
「おかえりなさいませ。」
「ああ、桐谷君。来てくれてありがとう。あ、…ただいま。」
会長が少し照れたようにそう言った。
やっぱり…会長の笑顔は心にまで染(シ)みる。
渉さんの態度が“ああ”なだけに、今は会長に抱きしめてもらいたい気分…
って、何考えてるんだろう。
でも…どちらかと言えば、会長には抱きしめてもらう…というより、抱きついてみたくなる…なんて。
会長…って
お父さんみたいなんだもん。
ああ、いけない。
私は自分の変な妄想を追い払った。
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