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「…誰か…来てるのかね?」
玄関で見慣れない靴にすぐに気付いた会長が言った。
「はい。大塚…隆さんがお見えです。」
「ああ、大塚くんか。」
会長は笑顔を作ってスリッパに履き替えた。
私が鞄(カバン)を受け取ると、会長は奥にゆったりと歩き始めた。
今日はプライベートで会長はハイヤーを利用していた。
もちろん室長はいない。
私は大塚さんの靴を少しの間見つめ、会長から少し遅れてダイニングに向かった。
ダイニングでは会長と大塚さんが和やかに話をしていた。
「遠野会長。ご無沙汰してます。」
大塚さんははっきりとした口調で会長に挨拶をしていた。
あれ。
さっきまでとだいぶ…態度が違うような…。
「久しぶりだね。父上は元気かね?一緒に来てくれれば良かったが、やはり父上はお忙しいかな。」
「貧乏暇なしってやつですよ。」
「こらこら。謙遜は結構だよ。今日はどうしたのかな?」
「久しぶりに渉の顔を見に来たんですよ。社長に就任してからまだお祝いもしてなかったし。外で祝いがてら食べようと思ったんですけど、渉は忙しいらしくフラれました。」
…お祝い…?
そんなことは一言も言ってなかったと思うけど…。
「それはすまないね。」
「いえ、いいんです。僕も連絡もなしに急に来させてもらいましたし。」
彼はハキハキと…そして終始笑顔を浮かべていた。
そして、会長も。
すると会長がそのままの笑顔でこう言った。
「隆君。それなら君も一緒に夕飯を食べていったらどうだ?」
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