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「え、そんなの悪いですよ。急に来た上に…食事まで…。」
「桐谷君、問題ないだろう?」
「…あ、はい。大丈夫です。」
「じゃあ、食べていきなさい。」
会長がそう言うと、大塚さんはゆっくりと視線を私に移した。
「…じゃあ、遠慮なく…いただきます。」
彼の口の両端が気味が悪いほどにじわじわと上がる。
それを見た私の全身を鳥肌が覆っていく。
「渉、せっかく隆君が来てくれたんだ。お前も仕事は後にしてこっちに来て三人で飲もう。」
会長が渉さんを呼んで、次は私に声を掛けた。
「桐谷君、来てもらって早々で悪いが、佐和子さんに聞いて準備してもらってくれるかな。」
「はい。わかりました。」
私が振り返ってキッチンに向かおうとすると、大塚さんが私を呼び止めた。
「桐谷さん、ごめんね。」
さっきまで…『秘書ちゃん』だったのに…。
「…いえ。」
「…でも、楽しみだな…。僕、お腹空いちゃった。早く…食べたいな。」
「す、すぐに…準備しますから。」
私は急いでキッチンに戻った。
…今度は…
彼の視線に鳥肌が立っていた。
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