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彼女を見つめ、ポーッとする私に彼女の言葉が飛んでくる。
予想もしなかった言葉だ。
「桐谷さん…菊森室長のことは…好きじゃないんですよね?」
「え?」
あまりに予想外の言葉に驚きすぎて言葉が出なかった。
彼女がどうしてこんなことを聞くのか…考えるより先に彼女が言う。
「桐谷さんがライバルだったら…絶対にかなわないから。」
「え、あ、えと。違う!好きじゃないよ!あ、でも、上司としては尊敬してるけど!好きとか、そういうんじゃないよ!」
ああ…、私ってば年上の余裕がまるでない。
彼女の方がよっぽど落ち着いている。
「…本当ですか?」
「…うん。」
落ち着いた彼女の言葉に自分も落ち着きを取り戻す。
「うん。だって…。」
心臓が跳ねる。
今度は勢いよく顔の中心から熱が広がる。
別に…
本人にいうわけじゃないんだから。
私はこの時にも年上の余裕なんてまるでなかったけれど、自分の気持ちを確かめるようにしっかりとそれを…
…初めて言葉にした。
「…私が好きなのは…社長だから。」
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