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そして会長はそのままの笑顔で付け加えた。
「桐谷君と渉のせっかくの夏休みだ。明日には彼は帰るし、佐和子さんも家を出る。私も昼前から外出して…夜も遅いだろう。昼も夜も二人で楽しみなさい。…帰って来ても…いいのかな?なんならどこかに泊まった方が…いいのかな。」
「…か、会長。も、もちろん、お帰り下さい。待ってます!」
思わず大きな声をあげてしまった。
「なんなら、そうしてくれてもいいけど。どっちだっていい。親父がいようといなかろうと、カンケーねえから。」
私の横で渉さんは冷静だった。…でも、その顔は笑っていた。
「明日は二人でゆっくりしなさい。その代り、その翌日は私も交えて三人での夕飯を頼むよ。これでも実は、楽しみにしていたんだから。」
「へい。へい。さすがに2日間も親父の楽しみ奪ったら後がこえーしな。」
「会長のために、今からメニュー考えときますね。」
「ああ、よろしく。」
…さっきまでの雰囲気とは全く違う。
私も…きっと渉さんも…
すごくホッとしていた。
やっぱり、会長は…
すごい人だ。
3人になってからの時間はあっという間だった。
途中、佐和子さんが戻って来てからもその雰囲気は変わらず、さっきまでのことが夢かとも思えたくらい。
「彼がお風呂から上がったら、桐谷君もお風呂を済ませなさい。そしたら、少し早いけれど、自分の部屋で休みなさい。部屋にはある程度のものは揃っているはずだが、足りないものがあれば佐和子さんに言いなさい。」
「…ありがとうございます。」
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